アリシュについて
起源
アリシュはベルトレスリング競技の一つであり、キルギスにて古代から神事・祝い事で行われていた民族格闘技(伝統遊戯)の一つを近代スポーツ化(単純競技化) したものである。
テュルク系諸民族が居住するユーラシア大陸中央部に位置する国々には必ずと言っていいほど同系統の帯系組技格闘技が行われている。また、アリシュとは「(帯を)取ること」を意味する。
ルール
パフラヴァーニーやカザフクレシュと同じく、2017年9月に開催されたアジアインドアゲームズではベルトレスリングのカテゴリーの1つとして行われた。
ルールはUWWベルトレスリングとほぼ同じだが、階級区分・ベルトやユニフォームの色・得点の評価ポイントなどに微妙な差異が見受けられる。
クラシックスタイルとフリースタイルの2スタイルがあり、クラシックルールは足を使った攻撃が禁止されているが、対戦相手の両足がマットから離れた状態だと攻撃側は足の使用は認められる。フリースタイルはどのような状態でも足を使用することが認められている。
【主なルール】
試合時間/3分×1ピリオド
ユニフォーム/緑・青の上着と、白のズボンを着用する。
ベルトについて/赤色のベルトを胴の前で拳1つ分の空間を作って結び、相手のベルトを両手で持ち(互いに右差し・左上手の体勢)、レフェリーによる「Alysh」という掛け声で試合が開始される。
階級(シニアの部)/男子:60kg・70kg・80kg・90kg・100kg・100kg超級の6階級
女子:50kg・55kg・60kg・65kg・70kg・75kg・75kg超級の7階級
勝敗について/フォールもしくは得点差による判定で勝敗が決まる。
フォールとは相手を綺麗に背中から落とす柔道の一本勝ちのような投げにあたり、その他相手の身体を肩・腹・横腹(半身)・臀部・腿から落とす投げは2点、相手の両膝または片膝をマットに着地させると1点が付与される。
また、消極的姿勢などによる警告を2回告げられた時点で失格負けとなる。
同点の場合は最も価値の高い投げで得点した選手、コーションが少ない選手、最後に得点した選手が勝ちとなる。
フォールの場合、またテクニカルフォール(6点差がついた)の場合はその時点で試合は終了となる。
反則/審判への侮辱・攻撃、金属など危険物の持ち込みなどの行為は即失格。
所長のまとめ
UWWベルトレスリングと微妙な違いこそあれど、ルールも使われるテクニックもほぼ同じである。
なお、近隣国のトルクメニスタンにも「ギョレシュ 」と呼ばれる同様の競技が存在し、アジアインドアゲームズではトラディショナルレスリングのカテゴリーで試合が行われていた(スケジュールの都合上、ベルトレスリング日本代表は不参加)。いずれの競技も中央アジア諸国の選手が圧倒的な強さを誇るが、ベルトレスリングが文化として根付いており、子供の頃から取り組んでいるのだろう。彼らは重量挙げのクリーンの動作のように相手の身体を腰で跳ね上げるようにして投げるのが得意である。民族的にパワーが強いという大前提はあるにしろ、この腰の使い方こそが強さの秘密ではないかと思われる。この身体操作法を日本人流に応用し取り入れられるよう、今後研究が必要である。