それでは、野村特派員による渾身の「ウジュムチン・ブフ」レポートです。
①技術面について
ハルハ・ブフとの大きな違いは、
「下半身への攻撃が禁止されている」
「足の裏以外が地面に着くと負け」
「衣装が革製」
という3点。
ルール特性上、当然足に対するタックルなどの攻撃は禁止技であり、また、衣装の奥襟や脇の裏を一方的に掴まれてしまうと身動きがとれず即負けに繋がるので、棒立ちに近いような背筋を伸ばした構えが基本となり、そこから組み手争いや蹴たぐりでの崩しが攻撃の要となる。
ちなみに100キロ以上ある力士の蹴たぐりは非常に強力で、本場内モンゴルでは足が折れる人が続出し、ゴタル(ブーツ)の中に竹を割ったものを入れて防御する人が多いとのこと。
私はレスリングの要領で四つ組みか手繰り(アームドラッグ)を狙っていて、初戦では自分より小さい相手に四つ組みからの外掛けで倒せたが、自分と同等もしくはより大きな相手に四つ組みをすることは不可能だったので、最初の組手が非常に重要だと気づいた。
また、膝をついてはならないというところが意外とミソで、柔道のように腰を近づける攻撃は少なくなり、自然、柔道でいうところの「煽り」と「足技」を組み合わせた攻撃が主となっていた。
②雰囲気について
お祭りの中の催しということで、非常に和やかな雰囲気のなかで行われていた。
お祭りではボージ(小籠包の様なもの)・牛肉と人参のスープ・羊肉・雑炊などの飲食物やモンゴル雑貨が販売され、馬頭琴の生演奏と歌や獅子舞などが披露されていた。
また、開会式ではチンギス・ハーンへのお祈りなどの儀式も行われていた。
このように、祭礼のなかの催し物の一つとしてブフがあるという感じで、本場でもやはり同じような感じだそうだ。
私はボージと牛肉のスープを食べたが、良い意味で素材の味が活かされていて、非常に美味しかった。
③実際にやってみた感想
事前には知らされていなかったのだが、この大会には優勝10万円、準優勝5万円、ベスト4で1万円という高額賞金がかけられており、他府県からも多くのモンゴル・内モンゴル出身力士が集まっていた。
見るからに100キロを超える力士たちがウロウロしているのを見ると、「この人たちに地面に叩きつけられると本当に大怪我するかもしれない!」という恐怖を感じざるを得なかった。
試合前には衣装を着て会場内を3周するが、この時に獅子の舞を披露する。
これにはいろんな意味があるらしいが、体をほぐす効果もあるとのこと。なるほど。
首にジャンガーという飾りを付けている力士は優勝経験が豊富で、特別強い力士ということだが、残念ながら私も田中さん(※当研究所所長)も、二回戦でジャンガーを付けた力士に引きずり倒されて負けている。
今回参加するにあたり、インターネットなどでいろいろ勉強をしてから参戦し、獅子の舞を披露したり、相撲をとったりしたのだが、そうやってモンゴル・内モンゴルのことを知ろうとして飛び込んだら、驚くほど温かく迎え入れてくれた。
やはり、懐に飛び込んでみたら皆笑顔で話せるものだ。
ウジュムチン・ブフの取組でもセコンド的な役割で色々なことを教えてくれたりもした。
肌を合わせてしまえば異文化コミュニケーションなんて簡単ですね。
とても貴重で楽しい経験でした。